真っ暗な大地の片隅より、希望のシンフォニー
『女もすなる日記というものを、男もしてみんとてするなり。』
(土佐日記より、モチーフ拝借)
拙者もオランダの天気について述べることから始めたい。
冗談交じりなので、読み物としてお読みください。
秋冬のオランダの気候というものは想像を絶するものがある。
もう、真ーーーーーっ暗。
暗い、暗い、暗い。
わかりやすいところから始めよう。
これからの季節、まずは雲である。
一日中、雲が上空を多う。
ついで、霧。
真っ白な空の下で、真っ白な世界の実現に貢献。
二人ともお役目まっとうと言ったところだ。
曇るだけならばまだしも、秋冬の雲に雨はつきものである。
春夏の雲は可愛いものだ。
無害、素晴らしい。
秋冬の雲は、常にぐずついている。
そんなに泣かれても、困るなー。
小雨が中心、時々どしゃ降り。
さらにさらに、この記事を読んでいるあなたは勘違いをしている。
当地での交通手段は自転車なのだ。
何を隠そう、小雨のなか自転車をこぐ。
日本語を母語とする貴殿ならば、傘を思い浮かべるかもしれない。
しかし、そのポリ製の魔法、当地では無力。
オランダ名物、風車をを回すだけの風が吹き荒れる。
昨日の最高時速は100km/hを超えていた。
まとめると、以下のような情景を想像していただきたい。
雄大な緑の牧場のなかに、牛と羊と風車が立っている。
空はグレー色で、霧雨。
あなたはそのなかのよく整備された赤茶色の自転車道を、風を切って進む。
パーカーのフードをかぶり、革ジャンとグローブ。
日本で育ったあなたならば、驚くに違いない。
「服が濡れてしまうではないか」
オランダ流の返事はこうだ。
「んー、すぐ乾くから問題ない。」
オランダ人大好きの"Geen probleem (No problem)"である。
この記事のポイントは、そこではないのだ。
つまり、オランダの天気がゴミクズであることではない。
ポイントは、太陽の日差しのもたらす、稀代のルンルン感にある。
昨日は鬼のように晴れた。
これは秋の今ですら、一週間に一度あるかないか。
驚天動地、大事件である。
空の青い部分は、人間をこの上なくワクワクさせる。
運河沿いにて自転車漕ぎ、暖かな太陽の日差しに照らされる。
オランダの光明な太陽が照らす緑は、一層その濃さを増す。
事実、昨日は隣街Haarlemまで往復20kmのサイクリングであった。
嬉しすぎて、青い写真の撮影は失念してしまった。
やや白いが、良い虹が出た。
黒い雲が指し示す如く、言わずもがな、このあと大雨を食らう。
気狂いのような晴れの清々しさ。
これは絶望的な天気のなかで生まれる、微かな希望。
スイカに塩を振って食すようなもの、といえばイメージしやすいであろうか。
最後に付け加えるとするならば、この世界史上最悪の天気がオランダ人の気質に影響しているように思われる。
ダイレクト、インディペンデント、ストロング。
このようなひょんなことからも、国際理解は進むのだと信じて疑わない。
ぜひ機会と勇気のある方は、冬のヨーロッパに2週間程度足を運んでもらいたい。
雨が飛び込む目と凍える身体をもって、この絶望と希望のシンフォニーを体感していただける。
14日あれば、1日ぐらい晴れるであろう。
晴れると、、、いいな。